はじめに
2023-24シーズンの振り返りとして、印象的だった試合を改めて振り返っていく試み。
今回は第7節 東京U戦 Game2を取り上げる。
マッチアップに関する大発明から素晴らしいプレーがいくつか生まれて大興奮した覚えがある。
以下が当時の実況ツイート。
この試合の背景
相手外国籍とのマッチアップで、ランダルがOffに苦しんでいた開幕直後。
その問題に対して第3節ではランダルScreener Popという1つの答えを出していた香川。
それから約1ヶ月後のこの時期、ランダルMUMについてもう1つの発明が生まれた。
こちらもまた素晴らしかった。天才だと思った。
良かったところ
✅ランダルムンホ同時起用のビッグラインナップ
▶️ムンホにBigがついてくれることで、ランダルvs Smallの自動MUMを実現
▶️自動MUMとは、ビッグラインナップ等のラインナップの工夫により、初期マッチアップからMUMを実現すること
✅マッチアップ変更でムンホにSmallがついてきた時のランダルムンホPnR
▶️Smallをムンホに隠されても、ムンホScreenerで逃さない最高のMUM意識
プレー解説
3Q 3:03
Empty Step-Up PnR (vs Chase)
- Roll Feed
ムンホ起用のビッグラインナップでランダルラベネルPnR。
ランダルにはSmallがついているため、東京Uが「Switchしてラベネルvs Small」と「Switchせずズレありのランダルvs Small」のどちらを選ぶかという状況。
この場面では後者を選んだことでラベネルがDiveでオープンになり、Roll Feedを受けてレイアップ成功。
香川の攻撃の起点となるランダルのMUMは、ポゼッション全体の難易度を完全に左右する。
この場面のようにあらかじめMUMができていれば、24秒間ずっとチャンス。
4Q 9:15
Post Iso
- 45Cut Feed
今回もムンホ起用のビックラインナップでランダルvs Smallの自動MUM。
その上でのランダルPost Iso。
2-3Zone Shiftされるがハメられにくい配置を取れていたため、ラベネル45Cutで見事にカウンターできた。
自動MUMにより、シンプルなPost Isoも相手にとって致命的なプレーにできる。
4Q 8:45
Corner Filled PnP (vs Switch)
- Pop Feed - Counter Drive
今回も自動MUMできた状態で、ランダルラベネルPnP。
Late Switchに対してラベネルがPop Feedを受けて、Smallに対してドライブからレイアップ成功。
3Q 3:03ではSwitchしなかったことでラベネルがオープンになった。
そのためか今回はSwitchした東京U。
ただ、それはそれでラベネルの簡単な1on1に繋がるだけであるため、東京Uの解決策にはならない。
自動MUMから始まる香川のポゼッションの支配。
4Q 7:22
Horns Flare - Corner Filled PnR (vs Chase)
- Kick Extra
自動MUMでランダルラベネルPnR。
Weak Sideからヘルプを引きつけてキックアウトとエクストラでムンホのコーナースリー成功。
3Q 3:03、4Q 8:45等を受けてと思われるが、自動MUMの前提があるランダルラベネルPnRにヘルプ送ってきた東京U。
それを見た香川は的確にワイドオープンのムンホまでパスを繋いだ。
結局、自動MUMが起きてしまっている時点で、香川圧倒的有利な盤面を東京Uが後から覆すことは難しい。
4Q 3:00
Horns Flare - Corner Filled PnR (vs Switch)
- Top Iso
ランダルにBig、ムンホにSmallで自動MUMを回避してきた東京U。
それに対してランダルムンホPnRでSwitchさせて、改めてMUMを完了した。
ランダルvs SmallのTop Isoで、ランダルプルアップ成功。
自動MUMを許しているのが根本的な原因なのであればマッチアップ変更すればいい、という東京Uの解決策。
しかし香川は「ならばムンホをScreenerにPnRして普通にMUMしよう」と機転を利かせる。
「ランダルvs SmallのMUMを絶対に作るんだ」という香川の意思を感じることができて嬉しかったポゼッション。
4Q 2:28
Corner Filled PnR (vs Show)
- Roll Feed
今回もランダルにBig、ムンホにSmallで自動MUMを回避してきた東京U。
それに対して再びランダルムンホPnRでベーシックなMUMを狙う香川。
Switchしていいのか迷いが生まれた東京Uをよそに、ムンホがRoll Feedを受けてレイアップ成功。
直前のポゼッションでMUMを許して失点したことから、今度はどうするべきなのかと迷ってしまった東京U。
現状を構造的に解決できないことを悟ったDefは、このように中途半端な対応になりがち。
香川の徹底したMUM狙いの姿勢とその遂行力が本当に素晴らしかった。
最後に
ムンホ起用のビッグラインナップでランダルを4番からポジションを1つ上げよう、という画期的なアイデア。
これにより、Defが否応なしにランダルへSmallを当ててくれる仕組みを作り上げた。
これで自動MUMができてしまえば、あとはランダルに任せていれば勝手にオフェンスがうまくいく。
香川スタッフの2023-24シーズン一番の功績だと思う。
ただ残念だったのが、このビッグラインナップによる自動MUMのコンセプトがこの試合以降向上しなかったこと。
何が起こったのかというと、どのチームもこの試合最後の東京UのようにランダルにBig、ムンホにSmallをつけてくるようになった。
香川はそれに対して、この試合のようにムンホをScreenerにしてベーシックなMUMを実行すれば問題なかったと思う。
ただ、どういうわけだかそれをしなくなってしまった。
ムンホのチーム内での序列が下がってScreener機会を得られなくなったのか、そもそも東京U戦が偶然だったのか。
何があったのかは分からないが、とにかくムンホにSmallを隠されることで、ランダル自動MUMを成立させられなくなってしまった。
それがムンホのプレータイム低下、MUM意識低下、Post偏重、ハメられやすい配置といった1月以降の試合内容の低迷期への道を開いてしまったのではと思ってしまう。
今回の東京U戦はすごく良かったと思った。
だからこそ、以降の試合内容からして、香川にとって今回の試合はたいした成功体験ではなかったのかなと想像する悲しさも大きかった。
そんな嬉しさと切なさの両方が詰まった試合だった。