はじめに
Box1の知見は皆無だったが、2/24の品川戦で香川が1つのパターンを見せてくれた。
そのパターンが一般的になんと呼称されているのか知らないため、個人的な造語としてClear Fillと表現することにした。
そのClear Fillについて、事例を紹介しながらまとめていく。
Clear Fillをざっくり説明すると、Box1でマークされるプレイヤーがDefを連れて移動(Clear)して、その空いたスペースに別のプレイヤーが入ってくることで(Fill)、オープンが発生させる仕組みのプレー。
言葉では伝わりにくいと思うため、早速事例紹介に入っていく。
本記事のソースとなる、2/24品川戦の実況考察はこちら。
Clear Fill 事例紹介と解説
Box1でマークされるのはすべての場面で2の松井。
松井のClearで生まれたスペースを、他のプレイヤーのFillで利用していく流れ。
2Q 4:41の場面。
1コマ目、2コマ目。
2の松井は右Wingからスタートし、Box1でマークしてくるx1を連れて左Cornerへ移動。
松井が空けた右Wingのスペースはボールを運んできた1がFill。
このままでは1がワイドオープンになるため、x2とx4がx1の代わりに前衛右のスペースを守りに出てくる。
3コマ目。
松井のClearと1のFillの結果、フロアは3コマ目の状態に。
4コマ目、5コマ目。
x1がいなくなった前衛右のスペースを後衛右のx4が代わりに守ろうとしたことで、今度はその後衛右のスペースが空いた。
そこに4がFillして、x3とx4を引きつける。
その結果、5とのパス交換で1が右Wingのスペースで再びワイドオープンになった。
Box1はDef側もクオリティを出すのが難しい。
この場面は2コマ目と4コマ目のFillに誰が対応するのか、の部分でDefに連携ミスが発生したため、最終的にOffにワイドオープンを与えることになった。
3Q 7:55の場面。
1コマ目。
2の松井がBox1でマークしてくるx1を連れて、右Wingから左Corner(最終的には左Wing)へClear。
空いた右Wingのスペースは、ボールを運んできた1がFill。
2コマ目。
Clear Fillの結果、フロアは2コマ目の状態に。
3コマ目。
1が右Wingでワイドオープンになってしまうため、後衛右のx4がx1の代わりに前衛右のスペースを守る。
しかしそれにより、今度はx4が守っていた後衛右のスペースが空くことに。
その後衛右のスペースに5が的確にFillしてパスをもらうことで、イージーショットに繋げた。
松井のClearをきっかけに、2Q 4:41同様、Offがドミノ倒し的にチャンスを作れている。
Defとしては、3コマ目でx4が前衛右のスペースに出る際に、x5がその後の後衛右のスペースへのFillに対応できるよう準備しておくべきだった。
3Q 0:20の場面。
1コマ目。
2の松井は左Wingからスタート。
ボールを運んできた1は右Slotの4にボールを預ける。
2コマ目。
2のClearと同時に、1が左WingのスペースをFill。
3コマ目。
誰もx1の代わりに前衛左のスペースを守れなかったため、このまま1がワイドオープンで3ptを放つことができた。
3Q 7:55のように、後衛左のx4が前衛左のスペースを守りにいくべきに思えた場面。
ただ、この3Q 7:55から3Q 0:20の間で、5が左DSで存在感を発揮するようなプレーがいくつかあった。
そのためx4は、そう安易と4を捨てて前衛左のスペースに出ていくわけにはいかない、という背景があった。
おもしろい。
4Q 9:05の場面。
Clear Fillと前衛後衛同時自動MUMが組み合わさったポゼッション。
1コマ目、2コマ目。
23Ripによる2のClearと3のFillで、フロアは2コマ目の状態に。
この時、前衛では4がx2に対して、後衛では5がx3に対して自動MUMできている。
3コマ目。
左サイドにClearしていた2が右サイドに戻ってきた。
このタイミングでDefはM2M化していくが、5のマークをx3から引き継ぐのが、x5ではなくx4である点に注目したい。
仮にx3が3、x5が5、x4が1へとマッチアップしていたとすると、4とx2のミスマッチが残ってしまう。
そうならないために、x5は誰かにマッチアップすることはせず、x2のサポートに徹した。
その結果、5をマークできるのはx4のみだった、という説明になる。
4コマ目。
x2との自動MUMができている4は、ドライブでx2とx5を引きつけてキックアウト。
1のワイドオープンを演出した。
Defはめちゃくちゃ頑張ったポゼッションだった。
これまでClear Fillで簡単にワイドオープンを作られていた中、見事な連携でM2M化と自動MUM対応を両立させていたが、4とx2のマッチアップがあり続ける限り、最終的にはOff有利の構造に落ち着く。
自動MUMの威力はとてつもなく高い。
前衛後衛同時自動MUMについてはこちらの戦術コラムで解説。
4Q 7:27の場面。
1コマ目。
今回は初めから2が前衛右のx1を連れて左Cornerにいるところからスタート。
したがって、Offは4と1と3の3人で、x2とx3に対して3on2の数的優位。
2コマ目、3コマ目。
Offが3on2の数的優位を活かしてパスを回し、チャンスを窺う。
Topの4にボールが戻ってくるのに合わせて、x5がx2のサポートをしようと少し前に出てきた。
しかし4はその動きをチャンスと捉え、勢いよくカウンタードライブを仕掛けてレイアップに持ち込んだ。
この場面もx2に対する4の自動MUMが非常に効果的だった。
もしこの自動MUMがDefにとって脅威でなかったならば、x2が4、x3が1、x5が5、x4が3にマッチアップすることで済む話。
ただ、実際は4とx2のマッチアップでOffが有利になるため、Defはx5がサポートとして誰にもマッチアップせずにペイントエリアに残っておかなければならない。
だから4回もパスが回るほどの長時間に渡って、3on2の数的優位が維持された。
Box1 Attackのパターンの仕組みを前半3ポゼッションで単純に説明。
後半2ポゼッションは自動MUMと組み合わさった内容に発展した。
今回紹介したポゼッションは時系列順に並んでいる。
このことから、試合が進むにつれてDefは対応の精度を向上させていったこと、Offは単純なClear Fillにもう1つスキームを重ねて質の高まるDefをさらに上回ろうとしたことが分かる。
すごく興味深い戦術的駆け引きだった。