現場活動

ディフェンスに迷惑をかけないオフェンスの終わり方

はじめに

オフェンスの良い終わり方とはなんだろうか。
得点で終わることのみが良い終わり方として認められる?

筆者がコーチとして関わるチームは、Transition Offenseでの得点を目指すハイペースなスタイル。
そのため、チームを作る上で考えるのは「どれだけTransition Offenseの割合を増やせるか」。

Transition Offenseを作るには、まずディフェンスを成功させること。
ディフェンス成功のためには、Pick Upをエラーなく完了させて、相手のTransition Offenseを阻止することが最低限必要。
となると大事になってくるのは、Pick Upが可能な状態でオフェンスを終えること。

例えばの話。
Half Offenseで得点できずに終わった。
でもPick Upが可能な状態で終えたから相手のTransition Offenseを阻止して、相手のHalf Offenseをしっかり守りきれた。
おかげで、次のポゼッションではTransition Offenseで得点できた。

この例で言うと、最後のTransition Offenseでの成功は、最初のHalf Offenseが起点となっていた。
Half Offenseでは得点できなかったが、次のTransition Offenseの布石にはなった。
Transition Offenseでの得点を第一優先とするチームにとって、このHalf Offenseは一定の価値があったのでは、と考えられる。

ということで、「Pick Upが可能な状態で終えること」「相手にTransition Offenseのチャンスを与えないこと」、つまり「ディフェンスに迷惑をかけないこと」を良いオフェンスの終わり方と定義して、じゃあそれってどんな終わり方なの?を考えていく。

考えていく、というか直近の試合のデータをもとに分析していく。

Step0 : データ分析概要

分析対象とするのは、自チームの直近5試合。
「相手チーム」「Opp」といった言葉を使っていくが、それは5試合で対戦した5チームを1つにまとめてそう呼んでいる。

自チームがディフェンスからオフェンスになる(D→O)ケースと、自チームがオフェンスからディフェンスになる(O→D)ケースの両方のデータを集計した。

Step1 : OrderとDisorder

造語の紹介、OrderとDisorder。

ポゼッション終了時の状態を指す造語で、
Orderはマッチアップに乱れがないこと、Disorderはなんらかの要因でマッチアップに乱れがあること。
マッチアップに乱れがあれば、Pick Upの難易度は上がり、被Transitionリスクが高まる。

分析の最初の観点は、OrderとDisorderで直後のTransition発生確率に違いがあるのかどうか。
Order/Disorderそれぞれで直後のポゼッションがTransitionになったのかHalfになったのか比較する。

マッチアップ状態別のポゼッション数(D→O)
マッチアップ状態別のポゼッション数(O→D)

左がD→O(自チームがディフェンスからオフェンスになる)、右がO→D(自チームがオフェンスからディフェンスになる)。
どちらのケースでも、OrderよりDisorderの方がTransitionポゼッションに繋がりやすいことが分かる。

この図から、Disorderでのポゼッション終了は、直後の相手のTransition発生確率を高める特徴を持つと考えられる。
逆に言えば、Orderでのポゼッション終了は相手のTransition発生確率を抑える特徴を持つと考えられる。

Step2 : Disorder要因

Disorderでのポゼッション終了と当たり前に書いてきたが、Disorderにはどんなパターンがあるのか。
先ほどの図含め、今回は以下7パターンに分類した上でDisorderとしている。

  • OREB
    OREBを狙うことでのマッチアップの乱れ、OREBが取れたかどうかは関係ない
  • TOV
    TOVを犯したことでのマッチアップの乱れ、TOV後に即座にPick Upできる場合はOrderに分類
  • FB
    Fast Breakでのマッチアップの乱れ、FB後に即座にPick Upできる場合はOrderに分類
  • Zone
    ZoneはそもそもマッチアップしないためZoneオフェンス明けは基本的にDisorder
  • Cross
    オフェンス開始時点で歪なマッチアップになっていた状態、正規のマッチアップに戻そうとしてPick Upミスが発生しやすい
  • MUM
    スクリーンアクションでSwitchが発生したことでのマッチアップの乱れ
  • Rotation
    オフェンスでのアクションにHelpやRotationが発生したことでのマッチアップの乱れ

そこで、次はDisorderを要因別に分解し、その発生回数やTransition発生率の分布を整理してみる。

Disorder要因別のポゼッション数(D→O)
Disorder要因別のポゼッション数(O→D)

左がD→O、右がO→D。
Disorder要因ごとにポゼッション数には差がある。
また、左と右を見比べると、要因別ポゼッション数にはチームの特徴も出るものと思う。
ちなみにZoneとMUMについては、今回の分析対象試合ではポゼッション数が少なかったため、以降は特に言及しない。

ポゼッション数にムラがあることを示した上で、各Disorder要因でのTransition%を見る。
Transition%とは、全体のうちTransitionポゼッションになった割合。

Disorder要因別のTransition%(D→O)
Transition要因別のTransition%(O→D)

左がD→O、右がO→D。
OREBとTOVはTransitionに特に直結しやすく、次いでFB、Cross、Rotationが出てくる。

だから何?という感じではあるが、もうちょっと分かることがあれば各要因について具体的にプランを立てられそうだよね。
という匂いを感じる。

Step3 : Disorder要因とポゼッション成功と失敗

ショット成功で終われば、相手がスローインしている間にPick Upできる、という一般論がある。
これが本当なのか調べてみる。

検証方法は、同じDisorderのショット成功後と失敗後のTransition%を比較するやり方。

ショット結果ごとのDisorder要因別Transition%(D→O)
ショット結果ごとのDisorder要因別Transition%(O→D)

左が自チームがディフェンスからオフェンスになるところで、右がオフェンスからディフェンスになるところ。
図の中の説明をすると、ディフェンスになるチーム視点で、図の左側(薄い青)はショット失敗後の被Transition%、図の右側(濃い青)はショット成功後の被Transition%を示す。

図から分かるように、すべてのDisorder要因において、ショット失敗後のTransition%(薄い青)よりショット成功後のTransition%(濃い青)の方が低い。
それもかなり圧倒的に。

ややこしいので簡潔に言うと、ショット成功で終われば被Transitionリスクを抑えられる、ということ。
一般論通りの結果がきれいに出た。

ということで、Disorderでオフェンスを終える際は、できるかぎりオフェンス成功で終えることが大事と考えられる。

結論 : 良いオフェンスの終わり方を体現するための考え方

良いオフェンスの終わり方を考えるにあたって、OrderとDisorderの観点で考えた。

結果をまとめると、OrderとDisorderではOrderの方がTransition%が低い。
Disorderのうち、オフェンス成功と失敗とでは、成功で終えた方がTransition%が低い。

このことから、良いオフェンスの終わり方を体現するための考え方が2つ浮かび上がってくる。

考え方① : Disorderを起こさない

マッチアップが整った状態でオフェンスを終えることを目指す考え方。

ではどうやって?
Disorder要因は7つに分類できるため、このうちどれなら①の考え方に適用できるか考える。
個人的に3つあるかなと思う。

1つ目はTOV。
そもそもTOVしなければいいので、TOVを減らすための取り組みは考え方①に基づいたアクション。

2つ目はOREB。
Tag Upを徹底して、Pick UpのリスクヘッジとOREBのチャレンジを両立するのも該当する。

3つ目はCross。
歪なマッチアップでオフェンス終了した際に、無理に正規のマッチアップに戻ろうとすると明確なDisorderになる。そのため、正規のマッチアップにこだわらずにPick Upすれば、ミスマッチの問題は残るもののTransition阻止の観点ではOrderに分類可能。

考え方② : Disorderを起こしたらオフェンス成功で終える

オフェンス成功で終えてTransitionリスクを抑える考え方。

7つのDisorder要因のうち、FBとRotationの2つが明確に②の考え方に適用できる。
せっかく作ったチャンスは確実に決めきろう。
そうでないと逆にピンチになっちゃうから、という感じ。

また、考え方①で出したOREBとCrossもこちらに適用できる。

OREBについては、リバウンドがどこに落ちるか分析して、そこを目掛けてOREBを狙いに行く取り組みができる。
OREBを取りに行くならできるだけ高確率で確保しようという考え方。

Crossについては、ミスマッチがある中でのオフェンスでミスマッチを狙って攻める取り組みができる。
ミスマッチのチャンスを活かして得点で終えて、正規のマッチアップに戻す時間を稼ごうという考え方。

考え方③ : DisorderをPick Upの質でなんとかする

データから浮かび上がる考え方は2つだったが、大前提のポイントとして、Pick Upの精度を高めることはOrderでもDisorderでも全ての状況の土台になる。

ではこの結果をどのように自チームに反映させていくか。
自チームがオフェンスからディフェンスになるときのDisorder要因で多いのは、多い順にRotation、OREB、TOV、FB、Cross。
このうち、RotationとFBはショットセレクションを改善すれば、考え方②のパターンに乗せることができそう(以下の別記事で検討済み)。

CrossはすでにPick Upルールを整備して徹底しているため、考え方③のパターンで頑張っているところ。

あとはOREB。
ここはどういうコンセプトでOREBを狙っていくか、検討が必要。
今回の分析対象になっている試合では、EFG%の低さを異常な高さのOREB%でカバーする構造で勝っていたため、そのポテンシャルを邪魔せずにTransitionリスクを抑える方法を考えることが重要。

最後に

本分析では、良いオフェンスの終わり方を「ディフェンスに迷惑をかけないこと」と定義するところから出発した。

その結果、オフェンスの終わり方としては、Orderの状態で終えること、またはDisorderが発生したなら得点で終えることが、ディフェンスに過度な負荷をかけない形である、という結論に至った。

Transition Offenseを軸とするチームにとって、Transition Offenseとはもちろん積極的に得点を狙い、ポゼッション数そのものも増やしたい局面。
そのため、Transition Offenseに繋がるディフェンスや、Transition Offenseにおける決定力向上に多くの練習時間を割くのが自然。

この前提に立つと、Half OffenseにはTransition Offenseと同じ水準で多様な選択肢や得点期待値を常に求める、という役割設定が必ずしも最適とは限らない。
つまり、Half Offenseでは、得点を狙う姿勢を保ちつつも、Orderを維持して終えることやDisorder発生時にそれを大きく拡大させずに完結させること、といったリスクヘッジの観点を設計に織り込むことも重要になる。

そして、それを実現するために、複雑なセットや多くの分岐を持つ設計は必要でない。
むしろ、シンプルなアクションで構成された、役割や判断基準が明確な設計が適していると考えられる。
そうしたHalf Offenseは、無用なTOVや過度なマッチアップの乱れを起こさないため、次のディフェンス、さらにその次のTransition Offenseへとスムーズに繋がりやすいはず。

Transition Offenseで攻めることを強みとするチームにとって、Half Offenseは独立した得点源であると同時に、チーム全体のテンポや構造を整え直す役割も担う局面。
そのため、Half Offenseをシンプルな設計とすることは、チームのスタイルに適した合理的な判断だと考えられる。

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