はじめに
筆者がコーチとして携わっているチームがミニリーグ戦に参加した。
このミニリーグ戦の期間中どのような準備をして、どのような試合結果になり、次戦に向けてどのように改善を図ったのか記録していく。
まず本題に入る前に、このミニリーグ戦の説明をしておきたい。
試合数は5試合で、自チームの目標は全勝優勝。
対戦チームの下馬評は自チームから見て、3チームは勝ちが見込める相手、2チームは拮抗するかもしれない相手といった感じ。
どのチームも昨シーズン終了から1〜2ヶ月ほどで迎える、新シーズン最初の公式戦である。
スケジュールとしては以下のように計4節あり、第1節だけ連戦で2試合行なった。
第1節(2試合)
第2節(1試合)
第3節(1試合)
第4節(1試合)
ミニリーグ戦への準備内容
昨シーズン終了からの1〜2ヶ月で、今回のミニリーグ戦に向けてどのような準備をしたのか簡単に整理する。
準備内容については以下の動画で詳細に話しているため、興味があればこちらでぜひ。
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ハーフコートオフェンスのポジショニング
- 基本配置・初期配置は4out1in
- ドライブにはFade & Cutでリアクト
- ドライブが止められたらRescue
ハーフコートオフェンスパターン
- 4out1inから1on1
- 4out1inからDHO
1on1オフェンス
- 1on1の手順「詰める→突き出し→インライン」
- ボールマンはドライブ時にヘルプとリアクトの動きを見るために手前のスペースで溜めを作る
フルコートマンツーマンディフェンス
- 相手にトランジションオフェンスを実行させないためにフルコートマンツーマンディフェンス
- バックコートでボールマンディフェンスを孤立させないためにヘルプ準備
新シーズンに向けて、最低限のポジショニングルールを整備した上で1on1強化に取り組んだ。
そのため、1on1中心のオフェンス戦術を採用した(するしかない)。
また、昨シーズンの反省としてTransitionの攻防で自分たちが走って得点する以上に相手に走られて失点することが目立った。
そこで相手に走らせないディフェンスを目指し、その回答としてのフルコートマンツーマンディフェンス。
準備内容はざっと以上で、ここから本題である各試合の結果と、その試合を受けての改善を振り返っていく。
第1節 結果
試合結果について、得点やボックススコアは公開せずに、勝敗と点差のみの公開とする。
ただ、Advanced StatsとFour Factorsはがっつり出していく。
第1節の対戦相手は、Game1・Game2ともに下馬評では勝ちが見込める相手。
そのため、どれだけ圧倒して勝てるか、が意識にある試合だった。
Game1
勝敗:勝ち(28点差)
Advanced Stats
| POSS | OFFRTG | DEFRTG | NETRTG | |
| 自チーム | 108.92 | 85.1 | 57.7 | 27.4 |
| 相手チーム | 95.52 | 57.7 | 85.1 | -27.4 |
Four Factors
| EFG% | FTA RATE | TOV% | OREB% | |
| 自チーム | 36.4% | 17.5% | 17.8% | 45.6% |
| 相手チーム | 40.4% | 11.8% | 30.2% | 14.3% |
28点差での快勝となった。
試合のポイントは、TOVとOREB。
ディフェンスでは相手のTOVを多く引き出したこと、オフェンスではOREBを確保してポゼッションを継続させ、低いEFG%を補ったことが大きい。
また、108Possのハイペースな試合にしたことで点差が広がったと思う。
Game2
勝敗:勝ち(30点差)
Advanced Stats
| POSS | OFFRTG | DEFRTG | NETRTG | |
| 自チーム | 106.16 | 97.5 | 68.0 | 29.6 |
| 相手チーム | 96.84 | 68.0 | 97.5 | -29.6 |
Four Factors
| EFG% | FTA RATE | TOV% | OREB% | |
| 自チーム | 39.5% | 12.7% | 12.1% | 44.8% |
| 相手チーム | 38.1% | 13.8% | 20.6% | 27.8% |
こちらも30点差と快勝の試合となった。
試合のポイントは今回もTOVとOREB。
Game1・Game2を通して、相手から奪ったTOVは53個。
正直なところ2戦ともUnforcedなTOVが相当にあったが、こちらがフルコートマンツーマンを仕掛けたことによるTOVも15個あった。
そのため、練習の成果はある程度見られたと捉えたい。
第1節 課題と次節に向けた改善
快勝の中で見つかった課題は2点。
課題1 ドライブへのリアクト
ミニリーグ戦に向けた準備として、ハーフコートオフェンスのポジショニングに取り組んだ。
その中でドライブにFade & Cutでリアクトするルールがあったが、試合では練習通りのリアクトができない場面があった。
FadeすべきプレイヤーがSpot Upしていたことでボールマンがヘルプに捕まる場面、CutすべきプレイヤーがSpot UpしていたことでイージーレイアップではなくExtra Passでの3ptでのフィニッシュになる場面などがあった。
課題2 ボールマンのインライン取りと溜め
ミニリーグ戦に向けた準備として、1on1オフェンスにも取り組んだ。
その中で1on1の手順を「詰める→突き出し→インライン」という合言葉で整理した。
詰めることで抜ける間合いを作りたい、詰めた上で突き出して、突き出し後はインラインを取ってボールマンディフェンスの挽回を阻止する、という狙いである。
この手順において、「詰める」を飛ばして「突き出し」に移ったことでボールマンディフェンスを抜くことができない。そこでボールマンディフェンスをなんとかするためにさらに加速した結果、「インライン」の手順を飛ばしてしまい、ボールマンディフェンスを特に抜けないままヘルプに突っ込んでしまう場面があった。
また、「詰める」「突き出し」までは良かったものの、「インライン」が取りきれずにヘルプに捕まる場面も見られた。
そこで以下の練習を実施して、1on1の手順とリアクトの再確認を図った。
- ボールマンはディフェンスに見立てたコーンに対して「詰める」「突き出し」で突破
- Cornerの4はCutでリアクト
- ボールマンは「インライン」を取りながら溜めを作り、x4の反応次第でパスかシュートかを選択
あとは、Fade & Cutを意識することを言葉で伝えた上で練習内のゲームを実施した。
以上が第1節を終えての練習。
第2節 結果
第2節の対戦相手は下馬評では拮抗するかもしれない相手。
ただ、当日相手チームの主力に欠場があることが発覚し、当たり前に勝たなければならない試合となった。
Game3
勝敗:勝ち(15点差)
Advanced Stats
| POSS | OFFRTG | DEFRTG | NETRTG | |
| 自チーム | 102.96 | 76.2 | 61.6 | 14.7 |
| 相手チーム | 101.72 | 61.6 | 76.2 | -14.7 |
Four Factors
| EFG% | FTA RATE | TOV% | OREB% | |
| 自チーム | 33.5% | 8.3% | 12.4% | 46.4% |
| 相手チーム | 35.2% | 16.0% | 21.7% | 22.0% |
15点差での勝利、快勝とは言えない内容だった。
相手チームは欠場者があった影響で選手交代がほとんどできていない中、自チームは十分な選手交代ができたため、疲労で後半に差がついた形。
勝ったものの、良い内容とはあまり言えない手応え。
スタッツを見ると、Transitionを主戦場とするチームらしいハイペースで、この試合も100以上のPossを記録。
TOVとOREBで優位に立つ試合展開となっていた。
第2節 課題と次節に向けた改善
今節の内容を受けて取り上げた課題は1つ。
ちなみに前節の際に実施したリアクトとボールマンスキルについてはぼちぼちの成果だった。
EFG%の低さが物語るように、オフェンスの成長はそこまで見られなかった。
今回は別の内容を取り上げた。
課題 フルコートマンツーマンでのPick Up
第2節でのフルコートマンツーマンでは、Pick Upでもたつく場面が散見された。
具体的には、相手チームのマッチアップが自チームのマッチアップと一致していないことによるPick Upの乱れ。
オフェンス終了からディフェンス開始にかけて、自チーム側で決めているマークマンを探す時間が発生してPick Upが遅れてしまう。その影響でフルコートマンツーマンの強度が落ちてしまう。
その結果、ハードなディフェンスから素早いオフェンスに繋げていく、という理想のサイクルをうまく作ることができなかった。
改善のために、Pick Upルールを新設して練習内のゲームを実施した。
ルールというのは「『マークマン』よりも『近い相手』を優先してPick Upしよう」というシンプルなもの。
ルールを伝えるだけでどのくらい変わるだろうか、と見てみたところ、練習内のPick Upに関しては劇的に改善された印象があった。
これには素直に驚いた。
このように、想像以上に素早く課題改善の目処が立ったため、次節に向けてフルコートマンツーマンのさらなるブラッシュアップを図った。
発展 フルコートマンツーマンからのTrap
マンツーマンは1on1であるが、良いマンツーマンにするには、ヘルプを含めて組織的な守備にする必要がある。
そこでTrapのポイントを2つ設けた。
1つ目:サイドラインに追い込んだ
x1がボールマンをサイドライン際に追い込んだタイミングで、x2がTrap、x3とx4がRotationする形。
x5はマークマンの5と空いている4の両方をケア。
2つ目:ボールマンが孤立した
ボールマンにボール運びを完全に任せている場面。
x3が2をケアできる状態になるタイミングでx2に声をかけて、x2はマークマンを捨ててTrapする形。
x3の声かけのタイミング次第では無謀なTrapになりうるため、タイミングの見極めが重要。
このTrapを導入した意図として、Trapのパターンからスティールできたらいいなという気持ちはもちろんある。
ただ、それ以上に全員がフルコートマンツーマンの中で正しいポジショニングを取り続けることを徹底したい、という意図の方が大きい。
正しいポジショニングを5人ができていればTrapのパターンの現象を起こせるが、できていなければどこかで隙が生まれて現象を起こせない。
そのケーススタディ的な側面を狙って、Trapパターン練習を実施した。
第2節を受けての課題と改善については、以下の動画でも詳細に話しているため、興味があればこちらでぜひ。
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第3節 結果
第3節の相手は下馬評では拮抗するかもしれない相手であり、5試合の中では最大の山場。
Game4
勝敗:負け(2点差)
Advanced Stats
| POSS | OFF RTG | DEF RTG | NET RTG | |
| 自チーム | 111.92 | 82.0 | 83.9 | -1.9 |
| 相手チーム | 100.36 | 83.9 | 82.0 | 1.9 |
Four Factors
| EFG% | FTA RATE | TOV% | OREB% | |
| 自チーム | 39.2% | 19.4% | 19.2% | 28.3% |
| 相手チーム | 53.9% | 24.7% | 24.0% | 32.4% |
接戦での敗戦となった。
過去3試合ではスタッツ上、EFG%は拮抗する中で、TOVとOREBで優位に立つ試合が続いていた。
しかしこの試合では、EFG%で圧倒され、OREBでも相手に優位を取られる試合となってしまった。
第3節 課題と次節に向けた改善
自チームのEFG%が低いのは今節に限った話ではないため一旦置いておくとして、相手のEFG%の高さは要検討。
Box Scoreを確認すると相手チームの2P%は60.7%であったのだが、簡単なレイアップを多く許したことがこの数字から想像できる。
内容に着目すると、映像から印象として課題になっていたのは、奇しくも今節に向けて練習を重ねたPick Upミスからの失点とフルコートマンツーマンを突破されての失点だった。
そこで、改めてPick Upとフルコートマンツーマンの練習を重点的に実施することにした。
ちなみに、ミニリーグ戦後に詳細に分析した数字を紹介すると、この試合のディフェンス失敗ポゼッションは55回。
そのうちPick Upミスまたはフルコートマンツーマン突破による失敗は合わせて17回だったため、印象通りの結果だったと言って問題ないと思う。
課題1 Pick Up時のセーフティ
Pick Upミスの発生場面を映像で振り返ると、要因は主に2つだった。
1つは「近いところでPick Up」のルールを守れていないパターン。
これは練習がまだ足りなかった、と解釈できる。
もう1つは「近いところでPick Up」のルールに則ったところ、セーフティ不在になるパターン。
セーフティ不在になることで、マークマンの重複などによる取りこぼしがあった際に誰もカバーできない事例が見られた。
図の例で示すと、黒がディフェンスに切り替わる際に、x2を3がPick Upしてx3を取りこぼした場合、1がx1をPick Upしているとx3を誰もカバーできない状態になる。
こちらは解決策が明確に必要と思える現象だった。
そこでPick Upルールをアップデートすることにした。
ローサイドは近いところ、ハイサイドはセーフティ
ローサイドである2、3、4は自分から見て近いところのプレイヤーをPick Upする。
ハイサイドである1、5はセーフティポジションを取ることで、取りこぼしのあったx3を代わりにPick Upできる。
x3を3が通常通りPick Upしていれば、1はそれをセーフティポジションから確認した上でx1をPick Upすればよい。
このルールを共有した上で、練習内のゲームを実施して確認を重ねた。
課題2 フルコートマンツーマンでのポジショニング
Two Pass Awayの位置でのポジショニングミスが頻発していた。
図のx3やx4のように、マークマンに気を取られて正しいポジショニング(黄色)から外れることがあった。
その結果、ボールマンとマークマンを同一視野に含めることができずヘルプが遅れたり、マークマンに近すぎてかえってマークマンの動き出しに反応できなかったりした。
また、この課題はTrapの連動性にも影響した。
Rotationが間に合わずにワイドオープンを与えてしまう場面があった。
そこで、バックコートのベースラインでのインバウンズから始まる1往復限定のゲームを実施した。
その際に、ポジショニングミスが発生したらその場でフィードバックして、ポジショニングの理解と意識が定着するように取り組んだ。
このようにフルコートマンツーマンの課題を潰す練習をして、ミニリーグ戦の最終節に臨んだ。
第4節 結果
最終節の相手は下馬評では勝ちが見込める相手。
ただ相手がどうとか関係なく、これまで4試合を通して課題を見つけては改善してきたプロセスの一旦の集大成を見せられるか、という意気込みでの試合。
Game5
勝敗:勝ち(66点差)
Advanced Stats
| POSS | OFF RTG | DEF RTG | NET RTG | |
| 自チーム | 94.52 | 119.3 | 49.0 | 70.3 |
| 相手チーム | 93.32 | 49.0 | 119.3 | -70.3 |
Four Factors
| EFG% | FTA RATE | TOV% | OREB% | |
| 自チーム | 55.7% | 8.2% | 13.7% | 50.0% |
| 相手チーム | 31.4% | 4.3% | 29.6% | 19.5% |
最後に最大点差での勝利となった。
TOVとOREBで優位に立つ勝ちパターンが復活し、EFG%も大幅に上昇した。
前節の課題を振り返ってみる。
前節、Pick Upミスまたはフルコートマンツーマン突破によるディフェンス失敗は合わせて17回だった。
それが今節では4回まで減らすことができた。
今節と前節の相手との戦力差の違いを加味しても、今節は良いディフェンスができたと評価したい結果と内容だった。
おわりに
全勝優勝を目指して臨んだミニリーグ戦。
結果は4勝1敗の悔しい成績。
ただ、5試合を通して特にTransition Defenseの面で多くの課題に気づくことができた。
気づいた課題に練習で取り組み、その成果が次の試合で良くも悪くも毎度得られたため、チームとしての前進を感じられる有意義なリーグ戦だった。
ミニリーグ戦を終えた現在はオフェンス面の改善に着手しているため、近いうちにオフェンス面の考えについてもまとめたい。